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Chu! PRESS

2021.12.10

アンパンマンに秘められた思いを辿りながら楽しむ「やなせたかしの世界」

#やなせたかしの世界
アンパンマンに秘められた思いを辿りながら楽しむ「やなせたかしの世界」
郡山市立美術館で12月26日(日)まで開催中の企画展「やなせたかしの世界 愛と抒情~アンパンマンを生んだ人~」。
本記事では、Chu!PRESS編集部のかなごんが実際に足を運んで感じた企画展の魅力や、作品の裏側にあるアイディアの原点まで、じっくり深掘りして連載でお伝えしていきます。

【前回の記事はこちら→
https://bit.ly/3ldGwbt

「やなせたかしの世界」の魅力をご紹介する連載も3回目となりました。
3回目ともなってくると、冒頭にどんな言葉を並べるべきなのか、わからなくなってきました。
ですが、やなせさんも「愛する歌 第1集」のまえがきで「いちばんはじめのことばをかくのはむつかしいことです」と書いているので、私が書きだしに悩んでしまうのは必然かもしれない、なんて思いながらこの記事を書いています。

今回も、郡山市立美術館の学芸員・永山多貴子さんのお話を交えながら、「詩とメルヘン」、「アンパンマン」について、そして東日本大震災とやなせさんの繋がりについて、ご紹介します。
 

●編集者・やなせたかし「詩とメルヘン」


「やなせたかしの世界」の中ほどまですすんでいくと、「詩とメルヘン」の表紙絵が並んでいます。
「詩とメルヘン」は、1973年に山梨シルクセンター(現:サンリオ)から出版された雑誌で、やなせさんが責任編集長をつとめました。もしかすると40~50代の皆さんの中には懐かしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。



読者から寄せられた詩をメーンに、プロのイラストレーターが絵を描くというスタイル。永山さんは、「詩と絵が融合するような雑誌」と話します。
やなせさんは、30年間挿絵や表紙の絵を描き続けただけでなく、取材や作品の選定、それぞれの詩につけるイラストはどのイラストレーターに描いてもらうのか、雑誌のレイアウトはどうするかなど、企画構成も担当。まさに、編集者やなせたかしとして活躍していたのです。

永山さんは、「タイトルの"メルヘン"という言葉。言葉そのものが現在だと揶揄の対象にされることもあるのが本当に残念なのですが、やなせさんは荒んだ世の中に必要なのは抒情の世界だとして、あえてこの言葉をよく使っていました。」と話します。
その後、やなせさんは「メルヘン」としてお話も発表しているのですが、童話という言葉を使ってしまうと、子供のためだけの世界になってしまうような印象があるため、年代に関わらず、大人にも読んでもらえるような作品にしたいと考えていたそうです。



永山さんの「詩とメルヘン」をお借りして、少しページをめくってみると…
こんなにも「人の心」がにじみ出ている雑誌ってあるんだ…と思わずつぶやいてしまうほど、子どもからおとなまで、色々な人の思いが詰まった詩が、いくつもいくつも飛び出してきます。
ふと開いたページの詩を読んだだけで、ほろりと泣いてしまいそうになることも。

「やなせさんはこの雑誌を通して、詩人やイラストレーターを育成していたとも言えますね。」と永山さんは話します。

今回の企画展では、そんな詩とメルヘンの表紙絵の原画をいくつか鑑賞することが出来ます。少しご紹介します。

まず、こちらの作品。


(「おろしたてのパレットに似る初夏の蝶」『詩とメルヘン』1997年7月号表紙絵)

写真ではうまく伝えることが出来ないのですが、実際に見てみるとぷっくりしています。原画ならではです。
こんなにもこだわって描かれているんですね。


そしてこちらの作品。


(「夕やけのカーテンをまきとれば美しい夜」『詩とメルヘン』1977年11月号表紙絵)

「夕やけのカーテンをまきとれば美しい夜」という作品なのですが、タイトルまで詩的で美しいです。


続いてはこちら。


(「野のはての秋の工場のセレナーデ」『詩とメルヘン』1993年10月号表紙)

鍵盤の形をした工場の煙突から、音楽の煙が出ています。
「野のはての秋の工場のセレナーデ」というタイトルなのですが、セレナーデとは、窓の下で恋人のために奏でる曲のことです。なんとロマンチックなんでしょう…。


そしてこちらの作品は、「詩とメルヘン」最終号の表紙を飾った作品。


(「惜別のワイングラスに海暮れる」『詩とメルヘン』2003年8月号表紙絵)

真っ白な余白が印象的な作品です。


ところで、みなさんにクイズです。
こちらの表紙絵、なにか共通点があると思いませんか?

実は、すべての表紙絵に男女の二人組「アベック」が描かれているのです。
季節に合わせて描かれた二人の姿に注目して鑑賞するのも楽しいですよ。
 

●やなせたかしとアンパンマン

誰もが一度は見たことのある国民的人気キャラクター、アンパンマン。
おなかをすかせた人や困っている人がいたら一目散に駆けつけて、自分の顔を分け与えて助けてくれる、正義のヒーローです。


(「顔をあげるアンパンマン」)


太平洋戦争を体験したやなせさん。激戦区へ行くことはなかったものの、食糧難に苦しみました。
1945年に日本は敗戦。正義のためと戦ってきたにもかかわらず、世の中の考え方は180度変わり、日本は「悪魔の軍隊」と呼ばれました。
また幼い頃に両親と失ったやなせさんにとって、とても大切な存在だったたったひとりの弟も戦死してしまったと知り、"正義とは何か"と考えたそうです。

そしてたどりついた答えが、「本当の正義は、おなかをすかせた人に、食べ物を分けてあげることだ」ということ。
人を殺すのではなく、生かすこと。困った人がいたら助けること。それこそが「正義」だ。そんな考えがベースになって、あのアンパンマンが誕生しました。

今となっては「親が子供に見せたいアニメランキング」があったとしたら、確実に上位に食い込むアンパンマンですが、絵本として登場したばかりの時は、顔を食べさせるのが残酷だとして、親や幼稚園の先生といった大人たちからの評判はいまひとつだったそうです。



ところが、そんな声をよそに、図書館で絵本がボロボロになってしまうほど、子供たちから絶大な支持を得ました。アンパンマンは大ヒット。やなせさんが69歳の時、アニメ化も実現し、大人気キャラクターになりました。

「やなせたかしの世界」では、そんなアンパンマンが、アンパンのヒーローではなく、アンパンを配るおじさんだった頃の作品から、現在のアンパンマンまで、様々なアンパンマンの作品が並んでいます。

高知県のアンパンマンミュージアムのためにやなせさんが描いた作品もズラリ。
写真では見えませんが、ドキンちゃんがとても色っぽいです。



こんな風にセリフがないまんが版アンパンマンも…!
まずセリフを想像して、答え合わせしながら鑑賞するのもとても楽しかったです。


(「とべ!ANPANMAN ゴミラのまき / 「とべ!ANPANMAN ストローこうもりのまき)

 

●やなせたかしと東日本大震災



東日本大震災が起きた頃、やなせさんは引退を考えていたそうです。
しかし、被災地の避難所で子供たちが「アンパンマンのマーチ」を合唱していることを知り、生涯現役として活動することを決めたんだとか。

そして、これをきっかけに、やなせさんは被災地の皆さんを元気づける作品をいくつも生み出しました。
そのひとつがこのポスターです。

ビビットな赤に、太陽。そしてアンパンマン。
このポスターは被災地の自治体や自衛隊駐屯地、病院などに掲出され、多くの人を勇気づけました。
実際、今回の企画展の開催にあたって、スタッフにも「震災の時、ラジオから流れてくるアンパンマンのマーチに力をもらいました。」という声がいくつも寄せられました。

ああ、アンパンマン
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
(やなせたかし「アンパンマンのマーチ」より引用)


時を経て、コロナ禍の今、この言葉がまた心にしみるような気がします。

今回の展示の一番初めに、やなせたかし記念館の開館15周年を記念して建てられたという「たたかうアンパンマン像」の写真が展示されています。
(本当にごめんなさい、写真を撮影しそびれました。)

空に向かって、マントを翻しながら険しい表情でこぶしを突き上げ、アンパンチをするアンパンマン。
勇ましさを感じます。やなせたかし記念館のシンボルともいえる存在です。

実はこのアンパンマン像。当初、笑顔のアンパンマンのデザインが構想されていたそうなのですが、
構想中に震災が発生し、笑っている場合ではないと、戦う表情に変更されたのだそうです。

高知県のやなせたかし記念館で、晴れた日も、雨の日も、雪の日も、曇りの日もたたかい続けるアンパンマン像。いつか、生で見てみたいです。
 

やなせさんは、いくつかのアンパンマンミュージアム限定で販売している詩集「優・LOVE・美」のあとがきでこんなことを書いています。

『ぼくは普通の人よりずい分おくれて漫画家になり、ようやくプロとしてペン先一本でなんとか生活できるようにはなりましたが、それでも自分の方向が解らなくて悩みました。
ふとしたきっかけで月刊「詩とメルヘン」を創刊して編集長をするようになってから、おぼろげに自分の細道が見えてきたような気がしたのです。
前途の見えない細道を辿って、果してどんなところにでるのか解らないまま道しるべのない道に迷いこみました。
「やなせたかしの世界」というものがあるかどうか。ぼくには解りません。しかし何かしらこの道がぼくの道という思いはありましたね。』(「優・LOVE・美」あとがき より引用)


この企画展を楽しんだ今、勿論、ご本人にすらわからなかった「やなせたかしの世界」を、簡単に表現することは出来ませんが、「やなせたかしの世界」は確かに存在し、温かく、人々を応援し続けるものだと感じました。
やなせさんが伝え続けてきたメッセージをぜひ、みなさんならではの感性で、直に感じてみてほしいです。明日からも頑張ろう、そんな風に思える企画展です。


企画展「やなせたかしの世界」は12月26日(日)まで郡山市立美術館で開催中。

Chu!PRESS編集部 かなごん
【参考文献】
・図録「やなせたかしの世界」/ 公益財団法人やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団
・小学校5年国語「やなせたかし―アンパンマンの勇気」 / 光村図書出版株式会社
・詩集 愛する歌 第1集 / やなせたかし / 株式会社サンリオ 
・「愛・LOVE・優」 / やなせたかし  / 有限会社やなせスタジオ 
・「優・LOVE・美」 / やなせたかし / 有限会社やなせスタジオ 
・「人間なんておかしいね」 / やなせたかし / 株式会社たちばな出版
・「しろいうま」 / やなせたかし / 株式会社フレーベル館
・「すぎのきとのぎく」 / やなせたかし / 株式会社フレーベル館
・「チリンのすず」 / やなせたかし / 株式会社フレーベル館

【参考サイト】
「やなせたかしについて」 / 香美市立やなせたかし記念館 
https://anpanman-museum.net/yanase/

 
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