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徳光 雅英
徳光 雅英Masahide Tokumitsu
“Shiokuri-bito”
 2022年最初のブログです。
 謹賀新年。殆ど「寒中見舞い」の時期で御座いますが、本年も中テレ(と宜しければ私徳光も)をご愛顧頂ければと存じます。どうぞよろしくお願い致します。

 さて私のブログの多くは、木曜日更新。大抵は当日放送の「ぶらカメ」のこぼれ話をご紹介しておりますが、今回は木曜は木曜でも「ぶらカメ」ではなく、宮城の『OH!バンデス』と結ぶ「バンデス×Chu!」のコーナーのリポーターとして、「シオクリビト」という通販サイトに登場する方(の一部)を先週6日(木)にご紹介しました。今回はそのこぼれ話です(遅くなってすみません)。
 「シオクリビト」とは、福島県の生産者を支援しようと去年の9月に開設された通販サイトです。ただ特徴的なのは、通販される商品が出てくるのはサイトのページの一番下、つまり最後の最後で、そこまでは生産者の人となりやエピソードが綴られているところです。サイトを企画した県商工会連合会の方に話を伺うと、
「好い商品、特徴的な商品は、作っている“人”がまず面白いんです。そこでその“人”の魅力に触れてもらって、興味をもってもらえれば…。」
 そこで生産者の話を聞いて、様々な想いやエピソードが並ぶのですが、出て来る8つ程のエピソードは、倍以上あるエピソードの中からアトランダムに表示される為、(集中的に何度もアクセスすれば別ですが)サイトを訪れる度に新たな発見があるのも特徴です。因みに「シオクリビト」という名前の由来は「仕送り」だそうで、「故郷を離れた家族に仕送りをするように、心のこもったものを“仕送り”するような感じで、福島の良いものが送られ、広がって行けば良い」という想いを、その名に込めたのだそうです。

 今回はその「シオクリビト」に紹介されている二つをご紹介しましょう。
今回取材した店舗をご紹介。1店舗目は「肉の秋元本店」。
今回取材した店舗をご紹介。1店舗目は「肉の秋元本店」。
店内はお肉やお惣菜がいっぱい。野菜や日本酒も売っている。
店内はお肉やお惣菜がいっぱい。野菜や日本酒も売っている。
 一つは白河市にある「肉の秋元本店」です。「シオクリビト」の中でエピソードを語っていたのは、専務の秋元雅幸さんです。秋元さんは単なる精肉店ではなく、「白河高原清流豚」と呼ばれる豚の生産農家でもあります。
肉の秋元本店のご夫婦(右が「シオクリビト」で取り上げられたご主人)。撮影時のみマスクをとっています。
肉の秋元本店のご夫婦(右が「シオクリビト」で取り上げられたご主人)。撮影時のみマスクをとっています。
こちらが漬ける前の、白河高原清流豚。
こちらが漬ける前の、白河高原清流豚。
「うちは白河高原清流豚の、唯一全ての部位が入る店ですから。」
 そう話す秋元さんのエピソードは「シオクリビト」をご覧頂くとして、こちらのサイトでは美味しい商品から参りましょう。
「シオクリビト」で紹介されている「白河高原清流豚紅白漬けセット」。
「シオクリビト」で紹介されている「白河高原清流豚紅白漬けセット」。
三五八漬けが白、味噌漬けが紅になる。1枚100gで4枚ずつのセットだ。
三五八漬けが白、味噌漬けが紅になる。1枚100gで4枚ずつのセットだ。
 白河高原清流豚の三五八漬け(さごはちづけ)と味噌漬けのセットです。
「新型コロナが流行して、身体に良いものを提供できないか」
と考えて、福島県など東北の一部に伝わる「三五八漬け」にしたらどうかと思いつき、2021年に販売を始めた新開発商品です。因みに三五八漬けとは塩3・米5・糀8の割合で漬けるもので、野菜などを漬けるポピュラーな漬け床です。
「福島県外では余り知られていないし、読めないし、なので、三五八漬けの良さも、白河高原清流豚の良さとともに広めたかった。」
と話します。頂くと、白河高原清流豚の肉の旨味の濃さが、三五八漬けの塩で更に引き立ちます。また脂に甘みがあって、さらっと爽やかでしつこくない。これはご飯が進む味です。
「販売の時点では冷凍してあるので、自然解凍させていく時に三五八漬けの旨味が染みていくように作ってあります。」
 なるほど、冷凍は保存・販売以外に美味しく頂く工夫も入っているんですね。
「味噌漬けも、脂に味噌が染みると、綺麗な飴色になるんですよ。これがまた美味しいんです。」
 いやぁこちらも食べてみたいですね。
 では「シオクリビト」で紹介されているエピソードを、幾つか”深掘り”してみましょう。
こちらが「白」の調理例。
こちらが「白」の調理例。
店内の冷凍庫だと、単品(1枚)から買える。
店内の冷凍庫だと、単品(1枚)から買える。
 三五八漬けの白河高原清流豚は秋元さんの新開発商品ですが、
「いつも頭の中では、白河高原清流豚から何か新商品に出来ないかと考えています。」
という秋元さんがいま開発中なのは、100%豚のラードの石鹸です。
「元々はギリシャかどこかで、ヤギの肉を焼いていて垂れた脂を使って手を洗ったのが(石鹸的な意味合いで使った)切っ掛けだそうなんです。お肉屋さんの手って、私の手を見てもらっても分かるんですが、皆さんつるつるすべすべなんです。それは常に肉を触っているからじゃないかなって…、だったらうちで育てている白河高原清流豚のラードで石鹸を作ったらどうだろうと思い付いたんです。しかも今、新型コロナの影響でよく手を洗うようになって、手がかさつくなんて話も聞きます。でもラードの石鹸が出来たら、汚れは落とすけど手に脂分は残せる石鹸になるんじゃないかな~なんて…。」
 精肉店で働く方の手がすべすべなのは初めて知りましたが、もし肉の脂が影響しているのだとしたら、肉の脂を利用した石鹸は“あり”なのかも知れません(科学的根拠については調べておりませんので、飽く迄秋元さんの実体験に基づく話に対する私の個人的な感想です)。
時には娘さんと近場のデートも…。
時には娘さんと近場のデートも…。
SNSで地元の四季折々の風景を発信。いいねが少ないのが悩み。
SNSで地元の四季折々の風景を発信。いいねが少ないのが悩み。
 また「シオクリビト」には、秋元さんが行き詰った時に娘さんとデートする話が出て来ます。
「本当ですよ。行き詰って半分泣きそうになっている時に、娘をデートに誘うんです。家の近くを出歩くだけなんですが、デートの楽しさも教えようかなと思って。」
 でもそんな状態でのデートって、娘さんにとって楽しいのでしょうか?
「私は娘と話しながら元気をもらって、ああしていった方が良いとかこうしたら良さそうだといった前向きな考えになるので、楽しいと思います。」
 という事は、秋元さんはお肉屋さんとしては娘さんに育ててもらっている部分もあるんですね?
「そうなんです。娘にも育ててもらっているし、お客さんにも育ててもらって、何とか生きています。」
 そういう謙虚さと飽くなき美味しさへの探求心が、美味しい豚肉の生産・販売に繋がっているんですね。
精肉店らしく、揚げ物のお惣菜も豊富。
精肉店らしく、揚げ物のお惣菜も豊富。
店は国道294号沿い。店の裏に駐車場もある。
店は国道294号沿い。店の裏に駐車場もある。
 そして対面販売もやめず、お客さんとのコミュニケーションを大切にしています。
「店員の事を気に入っているお客さんは『ただいま』なんて言って(店に)入って来てくれますよ。」
 量り売りではおまけなんかもするんでしょうか。
「はい、しますよ。逆に『あら、注文よりちょっと多くなっちゃった。』なんて言うと『いいわよ』って言って(多くなった分も)買ってくれる時もありますし…。」
 ははは、その辺りが対面販売の良さや面白さでもあるのでしょう。
 そんな会話の妙味も楽しんでみては?因みにお惣菜のメンチカツ150円を頂きましたが、ソースなどをつけなくても美味しい一品、ファストフード風に車の中で温かい内に頂くのもお勧めですよ。

 続いては白河市のお隣、西郷村の「カフェ お家パンオブ」です。ご夫婦が自宅を改装して営むお店で、こちらは自家製のビールとパンがいただけます。ビールを造っているのは、ご主人です。
洋風のお洒落なお宅が、店でもある「カフェ お家パンオブ」。
洋風のお洒落なお宅が、店でもある「カフェ お家パンオブ」。
店内と考えると小ぢんまりしているが、家を改装したと考えるとかなり広い。
店内と考えると小ぢんまりしているが、家を改装したと考えるとかなり広い。
 元々ご主人は半導体などを作るエンジニアでした。その後興味がある気象関係の仕事がしたくなって気象予報士の資格を取得。現在でも気象科学館での解説もしています。
 アメリカのビール店が多い或る町で暮らす機会があり、店ごとに違うビールの味を堪能する日々を送りましたが、日本に帰ってくるとそこまでのビールの多様さが無い事に気付き、「自分の飲みたいビールを作りたい」と自宅に工房を作り、ビール造りを始めました。
ビールが好きで自ら作るようになったご主人。
ビールが好きで自ら作るようになったご主人。
自宅敷地内に、工房がある。瓶詰めまで全て行う。
自宅敷地内に、工房がある。瓶詰めまで全て行う。
「妻がパンを作っています。原料はどちらも麦と酵母。固体がパンで、液体がビールですね。」
 更にビール作りで活かされたのが気象の知識。
「この年は気候がこうだったので、ホップの出来はどうだったかな?なんて考えながらビール作りをしています。」
 現在は常時揃えているのが、6種類のビール。この名前の由来が面白い。
「白河市の地名をつけています。そして標高の高低で、ホップの使用量の多少を表しました。ですから山の名前がついていたら標高が高いのでホップが多い、町の名前だと標高が低いのでホップが少ないです。」
 ホップの多い方から「三本槍岳IPA」(1916.9m)「赤面山スタウト」(1701.0m)「大平エール」(420m)「小田倉ラガー」(420m)「黒川スタウト」(408m)「白河ヴァイツェン」(356m)となります。
 地元の方なら、ホップの含有量の細かな違いが、ラベルの地名を見れば分かるかも知れません。
こちらがご主人の造るビールのラインアップ。
こちらがご主人の造るビールのラインアップ。
地名を使った名称は、ホップの量と標高を対応させている。
地名を使った名称は、ホップの量と標高を対応させている。
「楽しみ方としては、標高の低いビールから標高の高い順番に飲むのが好いですね。白河から始めて、大平に進んで…みたいな登山感覚で。あとブレンドをしても味わいの違いが楽しめますし、うちのビールは無濾過で酵母が生きていますから、同じビールでも造りたてと一定期間置いたのとではこれまた味わいが違います。」
 無濾過ならではの楽しみ方があるだけでなく、ビールのブレンドという考え方は私にとって新しいものでした。ただコーヒーもブレンドする楽しみ方がある訳ですから、ビールだってブレンドして楽しむ粋な方法もあるのでしょう(但しどのビールをどの割合でブレンドするかは、相当の通でないと難しいでしょうけどね)。
 因みに季節限定ビールも造っていて、いま造っているのは「ゆず」のビール。
「これは販売用サイトには出していないんですが、メールで問い合わせて頂ければ、在庫があれば対応します。」
との事。この冬は既に瓶にして100本分のゆずビールを造り、撮影に伺った12月末にはもう100本分を造っている最中でした。ビールは1本700円です。
奥様は、パンを作っている。
奥様は、パンを作っている。
こちらが販売しているパン。
こちらが販売しているパン。
 そしてパンを作っているのは、奥様です。最初はお子さんの為にパン作りを学んだそう。しかし
「思ったより難しくて…でも奥の深さも分かり、はまっていきました。」
 その後お子さんも学生になると、
「食べてくれる人がいなくなって、パン教室を始めました。」
 自分の家でパン教室を開くようになり、器具や道具を一つ一つ揃えていきました。
「最初は狭いので1対1で教えていたんですが、徐々に増えていって…。」
 そのうち、店を開きたいと考えた奥様は家族に相談。しかし特に大きな反応はなく、ついに店を開くにはどうしたら良いか、自分で調べ始めます。そして必要な資金を割り出し、
「店を開きたいので、資金を貸してください。」
とご主人に頭を下げたそう。それで自宅の中でパン店を開く事になりました。今では資金で借りたお金も返し、パン店を営んでいます。
断面はこんな感じ。塩胡椒を入れたオリーブ油につけて食べると最高!
断面はこんな感じ。塩胡椒を入れたオリーブ油につけて食べると最高!
円満の秘訣は、酵母にあり?!
円満の秘訣は、酵母にあり?!
 今回は黒パンを頂きました。香りが豊かで、中はしっとり外はぱりっ。小麦の味もしっかり感じられ、少々香ばしさも感じられました。
 特に塩胡椒をふったオリーブ油につけると、香り・旨味が膨らみ、複雑に絡んで奥行きのある味わいを楽しめました。
 しかも天然酵母の割には、酸味が少ない。黒ビールだからこそのある程度の“くせ”はありますが、どこか円やかさも感じます。
 しかもビールの酵母を使っていますので、ビールが合わない訳がない。ぷはーっ!

 そんなお二人は30年間、夫婦喧嘩をしていないそう。酵母も刺激を与えるのは宜しくないそうですが、夫婦間もそうなのでしょうか。奥様が
「意見の違う事もありますが、パン生地をこねているとすーっと抜けていきます。」
と言えば、ご主人も
「空や星を見ていると、(細かな事が)どうでも良くなります。」
と話します。趣味や好きなものがあると、それが良いガス抜きになるのかも知れませんね。

 麦と酵母が出会って美味しいパンやビールが出来るように、ご主人と奥様が出会って長い時間を重ねて素敵なパン屋とビール工房が出来ました。お二人には喧嘩をせずに過ごしてきた愛情という名の“酵母”があったとも言えるのでしょう←ちょっと強引
「お家カフェ パンオブ」は県道184号沿いにある。
「お家カフェ パンオブ」は県道184号沿いにある。
 ほかにも「シオクリビト」のサイトには福島県内の個性的で、且つ作った商品は美味しさ・出来栄えで間違いのない生産者が、多く紹介されています。今後も生産者の紹介は増やしていくという事です。そんな素敵な商品と、その商品を作り出す人の魅力に触れてみたくなったら、是非「シオクリビト」のサイトを覗いてみてください。ちょっとしたエッセイを読むような楽しさが待っていますよ。
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